立教大学の地域社会学 松元一明先生の授業にゲスト講師としてとしまプロジェクトのメンバーも参加させていただきました。
コミュニティネットワーク協会の事務所が、地域の皆さんが集まるサロンへと変貌中なのですが、その現場からオンライン中継をしました。
立教の学生さんから届いた質問と協会からの答えの一部も掲載いたします。
内容
第1走者:佐藤重春さん
(豊島区役所 住宅課課長)
高齢者の居住実態と新たな居住支援の展開
※議会中の超ご多忙にも関わらずお越し下さり本当にありがとうございました!
第2走者:伊部尚子さん
(株式会社ハウスメイトマネジメントソリューション事業本部課長)
不動産業界から見た老後の住宅確保と居住支援の問題
第3走者:渥美京子さん
(一般社団法人コミュニティネットワーク協会・としま・まちごと福祉支援プロジェクトリーダー)
「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」について
第4走者:幅野裕敬さん
(としま・まちごと福祉支援プロジェクト映像担当)
「プロジェクト」若者を対象とした取り組み
質疑応答から
Q. 第一弾のセーフティネット住宅にはどれほどの人の募集が集まったのか気になりました。
A. 問い合わせは3つのケースです。ひとつは医療、看護、介護などの総合窓口である高齢者総合相談センター(地域包括支援センター)や社会福祉協議会、看護師等を通しての相談です。退院後の見守りのある住まいがほしい、再開発の対象となっているため、住まいを探している。80歳なので大家が更新をしてくれない、等。ふたつめは障がい者の支援をしている法人からです。グループホーム等を出て自立したいが、障がい者を受け入れてくれる不動産物件が少ない。家賃が高いので安い家賃の住まいを探している等。3つめが若い方たちからです。若い人からは相談が2パターンあります。コロナで失職、家賃も払えず生活保護になった。もうひとつは、給与は14~15万。家賃が安いところで生活を整え、新たなチャレンジをして社会に貢献したい等
Q. 自分はボランティアサークルに所属しており、「人と人との交流」が一番の重要な関わり合いだと考えています。ただ自分自身今回のコロナでその難しさを強く実感させられました。「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」さんでは、新しい生活様式の中での「人と人との交流」を、どのように行っていかれるのでしょうか。
A. コロナによって引きこもりになったり、孤独を感じたり、認知症が進んだり、身体機能が衰えたりというケースが報告されています。そして、こういう時代だからこそ「交流」が必要とされています。そこで、感染対策をしながら、顔のみえる方たちの「居場所」づくりが大切だと考えています。
Q. 家賃を48000円から38000円に変更するとのことですが、資金はどこからどの程度出ているのでしょうか?
A. 投資額については、改修費は総額1100万円程度かかりました。改修費は、一部が豊島区からの補助(150万)、一部が大家さん、残りは当協会の自己資金です。それ以外は自己資金です。その他に家具などの什器備品費、wifi整備などで数十万程度。月々の収支については、支出部門は当協会が大家さんに支払う家賃は19万/月(4室ですので原価は1室47,500円)、共用部分の水光熱費、雑費月4万円。収入部門は、家賃は315,000円(79,000円×3室+78,000円が1室)共益・管理費が40,000円(10,000円×4室)。例えば、改修費等の自己資金400万を10年で回収する場合、月あたりの負担は3.3万円とすると、月々の収支は約90,000円程度黒字になります。ただし、5月1日より大家さんには家賃の支払いが始まっていることや、4室とも10年間満室に場合の収入のため、空室があると、その部分は当協会の負担となります。少しでも補填するため、協会の顧問が納戸に住み込み、管理人の役割をしながらそれまでアパートで払っていた家賃7万円を支払います。
Q. 単身の高齢者の方の中には、生活が不便でも一人で暮らしたいと考えている方もいるのではないかと思うのですが、自分から支援を受けたいと申し出ている方以外にも支援を行なっているのでしょうか。
A. これは大きな課題です。南池袋にできた「交流拠点」に足を運んでいただけるような企画を作っていきたいと思います。また、見守りの仕組みもこれから作っていきます。
Q. 家賃の値段設定はどのようにして決めたのですか?活動資金の採算は取れるのでしょうか?高齢者の方と障がい者の方がさせあって生活することが成功したら、今後の介護の問題も障がい者の方の就労問題も解決されると思うのですが、両者は同じ建物内に住むのですか?
A. 池袋で月14万円で暮らす、がコンセプトでした。そのためには家賃を5万円前後にしたい。一定の条件はありますが、家主であるコミュニティネットワーク協会が豊島区の家賃低廉化補助(3万円)を受給できれば、実現できると考えました。これからもセーフティネット住宅を増やしていきます。それぞれコンセプトをきめ、若い方向け、高齢者向け、障がい者向けというように進めたいと考えています。
Q. 東京都の都心部の都会という独特な特徴をもつ豊島区では政策の観点からまわりと比べてどういった違いがあるのか
A. たとえば中央区、千代田区、などはオフィス街がメインです。練馬区や足立区は住宅がメインです。豊島区はその中間で働く場所と住宅が混在している特徴があります。政策の観点からの違いは、①店舗。事務所、駅前再開発②劇場やホールなど文化的施設を積極的に展開③商店街、住宅街がある。木造密集地と昔ながらの住宅、商店街もあります。これを生かしながら、①②③がバランスをとりながら政策を展開しているようにみえます。ですので、豊島区の行政は柔軟性があり、民間との連携にも積極的であるようにみえます。
Q. 高齢者との付き合いは危険が伴うことがほどんどです。万が一事故が発生したら、どのように対処しますか。
A. 高齢者に限らず、誰にも「予期せぬ出来事」はおこるものです。事故を起こさないことだけを徹底すると、例えば高齢者であれば、部屋に鍵をかける、ベランダに出られないようにする、あるいはベッドから落ちないように柵をもうける、といったことになりかねません。それは高齢者の人権や生活を脅かすことになります。危険を回避するための対策として、ご本人は日頃から食事、運動、人と会うなど心と身体の衰えに対する予防をする、建物等のハードではバリアフリーにする、ソフト面では地域のネットワークを深め、見守りやサポート体制を整えるということだと思います。
Q. 豊島区に空き家があるといいますが、他県でも空き家がある地域を探して同じようなプロジェクトを立ち上げたりしているのですか。
セーフティネット住宅となると住民同士の問題とかは起きやすいですか。
A. 当協会は全国で展開してきました。北海道、東北地方、関東圏、関西圏、中国地方などでコミュニティの拠点づくりと住まいづくりを手がけてきました。問題がおきるか、の質問ですが、セーフティネット住宅などでは逆に住民同士の問題は起きにくいです。なぜなら、当協会が入居者とかかわり信頼関係を作っていくためです。課題が起きたときは、ともに解決策を見出すようにしてきました。
Q.
・空き家はどうやって調達してくるのか?
・運転資金の多くは補助金に頼っているの?支援者がいるのか?
・住宅の中は個々の部屋があるのか?それともシェアハウスみたいなイメージなのか?
A. 不動産事業を営む方たちからの情報を得て、それをもとに地主さんにアプローチしました。運転資金は補助金の要素もありますが、それは一部です(建物改修費と家賃の一部)。今後は補助金がなくてもやれる仕組みを作りたいです。支援者は行政、民間事業者、利用者、住民、働く人、資金提供者などです。セーフティネット住宅は今回はシェアハウス型ですが、今後は、1Kや1LDKタイプも作る予定です。
Q. 社会的弱者の方に住居を提供することしたが、入居の際に審査などはしているのか気になりました。具体的なつながりのきっかけとなるイベントや関わり方の例をもっと知りたいです。
A. 家賃低廉化補助金(3万)をクリアするかどうか。そのためには引き続き1年以上豊島区民であること、月の収入が15万8000円以下であることなどが要件となります。一人一人の生活に寄り添いながら一緒に考えながら進めています。また、生活保護を受給している方は、この家賃低廉化補助金の対象になりませんが、困っている方が目の前に現れたら、ケースバイケースで対応したいです。また、保証人がいない方には当協会が保証人になるなども。つながりのきっかけとなるのは、プロジェクト主題で開くイベントやセミナー。今後は南池袋の交流拠点で「おたがいまさサロン」はじめ、いろいろなことを企画中です。
Q. 高齢者・障害者・生活困窮者を支援することは人数が多くなればなるほど大変だと思いますが、どのようにサポートするのでしょうか。
国が始めたこととありましたが、それならば他の区でもできると思ったのですが、難しいのでしょうか。
セーフティーネット住宅を一年で10戸作るということは入居できる人がとても限られると思うのですが、優先順位はどのように決めるのでしょうか。
A. たしかに人数が多くなると大変です。今年度はセーフティネット住宅10戸と交流拠点2ケ所からスタートしますが、起動にのったら増やしていきたいです。また、他の地区では板橋区で取り組みがスタートしています。入居者の優先順位ですが、当協会の財政基盤の安定からいうと家賃低廉化補助の基準にあう方が優先です。しかし、コロナ禍で困っている方にも緊急性に応じて対応したいと考えます。
Q. 「全ての人々が対応できる場所として考えております。」と一般社団法人コミュニティネットワーク協会のウェブサイトに記載されているが、現実的に全ての人が対応できるということは可能なのだろうか。入居者を拒まないということであれば、本プロジェクトの想定しない人々が現れる可能性がある。障がいだけでも、言語障害や、視覚障害、歩行障害など多岐にわたるうえ、職員の知らない障害を抱えた人々が入居するかもしれない。また高齢者や子育て世帯も想定外の悩みを抱えた人々が入居するかもしれない。以上の可能性を踏まえてもなお、真の意味で全ての人々が対応できる場所であれば問題はない。だが、対応できない可能性があるのであれば、入居者に幻想を抱かせないためにも、言葉選びを見直す必要があると思う。
A. おっしゃる通り、すべての人に対応することはできません。しかし、対応したいと「考えています」。少しずつ努力を続けています。大切なことは「思い」と「理念」ではないでしょうか。それをもって「実現に向けて努力する」。努力目標を掲げ続けることが大切だと考えています。
Q. 様々な福祉支援プロジェクトを実施されていますが、どのぐらいの年齢層の方が参加されているのでしょうか。
A. 20代から70代までです
Q. 入居するにはどのような手続きが必要なのですか。入居審査はありますか。
「見守り」とは具体的にどのような事を指すのでしょうか。
A. 面談をして、まずはお互いに信頼県警を作ります。その方の生活設計もお手伝いします。その後、申込書を提出しただきます。家賃低廉化補助については、コミュニティネットワーク協会が住民票、課税証明書、契約書を添えて豊島区に申請します。また、入居審査もコミュニティネットワーク協会が行います。見守りとは、安否確認や緊急対応などです。
Q. まちづくりに地域の幸福度は関係するのか?
A. 関係します。幸せを物質的な豊かさに求めるのか、それとも心の豊かさに求めるのか。価値観は人それぞれですが、大切なことは「ここで暮らして心が豊かになる」「暖かい気持ちになる」「安心できる」ことが大切と考えます。そのためにはハードだけでなく、人間関係や安心のしくみ、誰かの役に立てる実感などの「ソフト」も大切です。まちづくりにおいては、事業者が一方的につくるのではなく、地域のみなさんと一緒に作っていくことが大切だおと考えます。
学生の皆さんと直接コミュニケーションするのはとても楽しかったです。
我々の活動に関心を持って下さる3人の学生さんとの繋がりも出来ました。
今後に期待が持てます!
貴重な機会を頂きました松元一明先生、本当にありがとうございました。