生活弱者を地域で支える 池袋で空き家活用プロジェクト

2020年9月1日 07時07分

空き家を改修して造られた共生ハウス西池袋=いずれも豊島区で

 二十三区で空き家率が最も高い豊島区で、空き家を改修して高齢者や障害者、生活困窮者向けの住宅を確保するプロジェクトが始まった。近所に相談や交流の拠点をつくり、住民も巻き込んで地域で支える。空き家対策と生活弱者の住まい確保の両立を目指している。
 JR池袋駅から徒歩十三分、立教大学の前にある築三十五年の空き家。七月までに改修工事を終え、シェアハウス「共生ハウス西池袋」に生まれ変わった。
 木造二階建て延べ八十七平方メートル。一階にバス・トイレや共用リビング、キッチンを設け、一、二階にベッドやエアコン付きの四室(それぞれ約十一平方メートル)がある。「いつまでも住み慣れた場所に住み続けるプロジェクトと聞いて、家を使ってもらおうと思った」。空き家オーナーの女性(89)のおいの男性(52)は、こう話した。

共用のダイニングキッチン

空調機器やベッド付きの居室

 プロジェクトは一般社団法人コミュニティネットワーク協会(東京)が担当。オーナーと十年の定期借家契約を結び、高齢者や障害者、生活困窮者など「住宅確保要配慮者」の入居を拒まない「住宅セーフティネット制度」に登録した。十年間は要配慮者専用とすれば、改修費補助を受けられる。
 家賃は豊島区の補助を受けた場合は四万九千円で、共益費一万円。「生活費も含めて月十四万円で都心居住ができる」として、入居者を募集中だ。厚生年金の平均受給額(二〇一八年度)が月に約十四万六千円であることから、「一人暮らしの年金生活者でも暮らせる設計」だという。
 生活相談や安否確認などを受けられるバリアフリーのサービス付き高齢者向け住宅とは異なるが、病院・施設への入所・退院時の付き添いや、緊急時の対応は有料で行っている。地元の介護サービス事業者と連携し、入居者の介護にも対応する。
 住まいを用意するだけではない。シェアハウスから徒歩十四分のビルの部屋(六十三平方メートル)に交流拠点「共生サロン南池袋」もつくった。新型コロナウイルスの感染防止対策をして、健康講座やマージャンカフェ、卓球カフェなどを日替わりで企画し、入居者と地域の人たちの居場所になっている。夜には飲食物を持ち寄って「おたがいさまサロン」も。将来は高齢者のデイサービスも開く予定だ。

交流拠点で毎週開かれるマージャンカフェ

 さらに、共生サロンから徒歩十三分の雑司が谷公園にある防災拠点「丘の上テラス」でカフェを開き、障害者の就労場所「共生サロン雑司が谷」を営む計画も進む。同協会の渥美京子理事長(61)は「コロナ禍による派遣切りなどで住まいを失った人も受け入れられる。高齢者も障害者も地元の人も、顔の見える関係になり、お互いに支え合える街づくりをしたい」と話している。

◆豊島区は空き家率23区トップ

 総務省によると、豊島区の2018年の空き家率は13.3%で23区で最も高い。空き家戸数は約2.7万戸で、9割が賃貸用という。
 だが、高齢者などへの大家の拒否感は根強い。15年の日本賃貸住宅管理協会の調査では、「高齢者世帯の入居に拒否感がある」大家は70.2%。障害者がいる世帯は74.2%だった。実際に高齢者世帯の入居を拒否しているのは13.4%、障害者世帯は2.8%。理由は(1)家賃の支払いが不安(61.5%)(2)居室内での死亡事故が不安(56.9%)−だった。
 文・五十住和樹/写真・淡路久喜
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